
こんにちは。
カメラマンの松山文弥です。
この写真を撮るとき、僕が一番伝えたかったのは
「蓋を開けた瞬間の満足感」
です。
容器の中には薄く重なるローストビーフと、
厚みのあるチキン。
奥にはきゅうりやトマト、レタス、白いポテトサラダが入り、
一箱の中だけでも食感や味の違いを想像できます。
テイクアウト商品は実物を手に取ってから選ぶのではなく、
メニューやWebサイト、SNSに掲載された写真を見て注文を決める場面も多いものです。
だから僕は、単に中身が分かる写真ではなく、
「これならしっかり食べられそう」と感じる一枚を目指しました。
肉の量を隠さず、一箱の満足感を最初に見せる
この料理で視線を集めるのは、
容器の大部分を占める二種類の肉です。
左側にはローストビーフを何枚も重ね、
中央から手前には厚く切られたチキンが並んでいます。
僕はここを整然と並べすぎず、
肉が少し重なった状態を残しました。
一枚ずつ分離して見せれば形は分かりやすくなりますが、
今回の商品では「たっぷり入っている」という印象のほうが大切です。
特にローストビーフは重なりの間に小さな影が生まれることで
枚数と柔らかさを感じやすくなります。
料理をきれいに整理することと、
おいしさを伝えることは必ずしも同じではありません。
現場では食材を足す前に、まず今ある量が写真の中でどう見えているかを確認しています。
真上ではなく少し角度をつけて、厚みまで食欲に変える
撮影位置は真上ではなく、
容器の中と食材の側面が同時に見える高さを選びました。
真上から撮れば全体の配置はより明確になります。
ただ、この料理ではチキンの厚みやローストビーフが
重なった立体感が弱くなります。
低すぎれば今度は奥の野菜が肉に隠れてしまう。
その間を探しながら、二種類の肉のボリュームと一箱の内容が両方伝わる位置を決めました。
撮影する側にとって高さは単なる構図の違いではありません。
何を「量」として感じてもらい、何を「情報」として見せるのかを決める選択です。
この写真では容器の縁も見せることで、
料理の量を実際の一箱のサイズ感と結びつけています。
ピンク、焼き色、緑、赤。食材の色をそのまま食欲の順路にする
ローストビーフのやわらかなピンクから、
チキンの暖かな焼き色へ視線が移り、その先にレタスときゅうりの緑、
ミニトマトの赤、ポテトサラダの白が入ります。
背景と容器を淡い色で揃えたのは、この食材の色を邪魔しないためです。
小物を置いて食卓らしさを加える方法もありますが、
今回は何も足していません。
商品そのものに十分な色と情報があるからです。
要素を増やすほど魅力が増えるわけではなく、
商品がすでに持っている色を見つけて、それがきちんと見える場所をつくる。
僕はフード撮影で、この「足さない判断」も大切にしています。
やわらかい肉と焼いたチキン、二つの質感を同じ光で潰さない
同じ肉でも、ローストビーフとチキンでは見せたい質感が違います。
ローストビーフは薄い肉が折り重なる柔らかさを残したい。
チキンは切り口の繊維と表面の焼き色を見せたい。
そこで僕が見ていたのは、料理全体の明るさよりも、
それぞれの食材に残る小さな陰影です。
光を均一に回しすぎると、
ローストビーフの重なりもチキンの厚みも平坦に見えてしまいます。
逆に影が強ければ、肉の色が濁って重たい印象になる。
明るく清潔な印象を保ちながら、
食材同士の境目には立体感が残る。
そのバランスを探しました。
光を決めるときは「料理を明るくする」ではなく、
「この食材の何を触れそうに見せたいか」と考えると、必要な光が見えやすくなります。
開いた蓋まで写すことで、持ち帰る商品の姿を伝える
この写真では、料理だけを切り取らず容器の蓋まで画面に入れています。
蓋は大きな面積を占めますが、
ここを省かなかったのには理由があります。
これは皿に盛られた料理ではなく、
持ち帰って蓋を開けて食べる商品だからです。
容器まで含めて見せることで、
お客様が商品を受け取ったあとの場面を想像しやすくなります。
白い背景にベージュの容器を置いたシンプルな画面だからこそ、
パッケージも含めた商品の清潔感が伝わります。
商品撮影では中身だけを魅力的に見せるのではなく、
実際にお客様の手元へ届く状態との距離を縮めることも、信頼につながると僕は考えています。
「何が入っているか」から「これを食べたい」へ
テイクアウト商品の写真には、
内容を正確に伝える役割があります。
ただ、ローストビーフ、チキン、野菜が入っていると分かるだけでは、
注文につながる写真としてはまだ途中です。
この一枚では肉の量、厚み、柔らかさ、野菜の彩り、
容器いっぱいに盛られた印象まで一度に伝えることで、
見る人が食べる場面を想像できるようにしました。
福井県で飲食店のメニューやテイクアウト商品を撮影するとき、
僕は料理をきれいに残すだけではなく、
その商品のどこがお客様の注文理由になるのかを考えます。
「量を伝えたい」
「素材の良さを見せたい」
「少し上質な印象にしたい」
など、商品によって答えは変わります。
その強みを写真の第一印象へ変えるところから、
撮影をご相談いただければと思います。




コメント