
こんにちは。
カメラマンの松山文弥です。
今回撮影したのは、二つの折箱で一つになるお弁当です。
左にはちらし寿司、右には揚げ物や煮物、野菜、たこなどのおかず。
一箱ずつでも料理の情報量がありますが、
この商品の魅力は二つが揃ったときに生まれる華やかさと満足感にあります。
だから僕が撮影で最初に考えたのは、
それぞれをきれいに撮ることではなく、「二つで一つ」が写真を見た瞬間に伝わることでした。
離れている二つの折箱を、写真の中では一つに見せる
二つの箱を完全に横一列へ揃えるのではなく、
ちらし寿司を少し手前、おかずの折箱を少し奥へ配置しています。
ここで距離を離しすぎると、別々の商品に見えてしまいます。
逆に近づけすぎると、それぞれの箱の形や料理が窮屈になります。
僕が見ていたのは、二つの箱の間にある白い余白です。
この余白を残しながらも視線が途切れない距離を探しました。
左のちらし寿司から右のおかずへ自然に目が移ることで、
二箱を一組として受け取りやすくなります。
商品撮影では被写体そのものだけではなく、
被写体と被写体の「間」も商品の見え方を決めます。
今回の写真では、その間隔が一つのお弁当に見えるかどうかを左右する大切な要素でした。
ちらし寿司の華やかさから、おかずの豊かさへ視線をつなぐ
左の折箱では、
白いご飯の上に黄色い錦糸卵、海老、枝豆、細かな彩りが広がっています。
右を見ると、
海老フライや揚げ物のきつね色、トマトの赤、ブロッコリーやパセリの緑、煮物の艶が続きます。
一つのお弁当の中に色も質感も異なる料理が多く入っているからこそ、
すべてを同じ強さで見せると写真が散らかって見えます。
そこで僕は、まずちらし寿司の明るい色へ視線が入り、
そこから右のおかずへ目が移る流れを意識しました。
二つの箱を撮っていても、写真としては一つの画面です。
どこから見始めて、次にどこを見るのか。
その順番を整えることで、料理の品数の多さが「情報の多さ」ではなく
「このお弁当の豊かさ」として伝わります。
黒い折箱を沈ませず、料理の色を浮かび上がらせる
このお弁当では、
黒を基調に金の柄が入った折箱も印象をつくる大切な要素です。
黒い器は料理の色を引き締め、
高級感を感じさせてくれます。
ただ、光の入り方によっては箱の中が暗くなり、
せっかくの料理が沈んでしまいます。
僕は箱そのものを明るく見せるのではなく、
黒は黒として残しながら、料理の表面に必要な光が届く状態を探しました。
背景を白くしたのもそのためです。
白い空間の中に黒い二つの箱が置かれることで一組の輪郭が明確になり、
その内側にある黄色、赤、緑、紫といった料理の色が素直に立ち上がります。
黒を持ち上げるのではなく、
黒を生かして料理を見せる。今回の光は、その考えから整えています。
衣の細かな凹凸と煮物の艶を、同じ一箱の中で残す
右の折箱には、
光に対する反応がまったく違う料理が入っています。
揚げ物は衣の細かな凹凸が見えることで香ばしさを感じます。
煮物は表面の艶が残ることで、しっとりとした質感が伝わります。
野菜には色の鮮やかさが欲しい。
光を正面から均一に当てるだけでは、
明るくはなっても、この質感の違いが弱くなります。
僕が現場で確認していたのは「全体が明るいか」よりも、
揚げ物の衣に小さな陰影が残っているか、煮物に光がきれいに返っているかという部分でした。
料理を撮るとき、露出を上げる前に食材の表面を観察する。
どこに光が当たり、どこに小さな影が残っているのかを見るだけでも、
料理の立体感は大きく変わります。
真上ではなく、この高さだから二箱の存在感が伝わる
料理の内容だけを整理して見せるなら、
真上から撮る方法もあります。
ただ、このお弁当では二つの折箱そのものにも存在感があります。
そこで少し高さを下げ、料理を見渡せる角度を保ちながら、
箱の側面まで見える位置を選びました。
特に右側の折箱は側面が大きく見え、
しっかりとした箱の厚みを感じられます。
左側にも同じように側面が見えることで、
二つが共通した一組の器であることも伝わります。
撮影位置を決めるときに「料理が一番よく見える高さ」だけで考えないことは、
僕が大切にしている判断の一つです。
容器を含めて商品なら、その厚みや佇まいまで含めて、
どの高さなら価値が伝わるのかを見る必要があります。
二箱あること自体を、このお弁当の価値として見せる
一つのお弁当が二箱に分かれているからこそ、
写真を見たときにも料理の充実感があります。
ちらし寿司だけでは伝わらないおかずの豊富さがあり、
おかずだけでは伝わらない主食の華やかさがある。
二つが揃って初めて、この商品の全体像が見えてきます。
僕は今回、小物や食卓の演出を足さず、
白い背景に二つの折箱だけを置きました。
主役はあくまで、この一組のお弁当です。
余計なものを引くことで、二箱分のボリューム、黒い折箱の品の良さ、
料理の細かな彩りがそのまま第一印象になります。
写真で伝えたいのは「一箱」ではなく、この一組を選ぶ理由
Webサイトやメニューで初めて商品を見るお客様は、
写真から価格に見合う内容なのか、
どんな料理が入っているのか、
どれくらい満足感がありそうなのか
を判断します。
今回のお弁当なら、
二つの折箱を別々の商品に見せてしまえば、本来の価値まで変わって伝わってしまいます。
商品撮影で大切なのは、料理を美味しそうに見せることと同時に、
その商品が「何なのか」を正確に伝えることです。
福井県でお弁当や仕出し料理、
料理の商品撮影をする際、僕は盛り付けだけを見るのではなく、
商品構成や販売方法、その写真をお客様がどこで目にするのかまで考えています。
今回なら、二箱を一つとして見せることが、
そのまま商品のボリューム感や品の良さを伝えることにつながります。
写真を見た人が、この一組を手元に置いたときの満足感まで想像できる。
そんな第一印象をつくることが、料理写真の役割だと考えています。




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